グリッタリング・グリーン
私たちが見守る中、エマさんは難しい顔で考えこんで。

やがて、やめた、と顔を上げた。



「デザート頼もうっと」

「ごまかさないで」

「いずれ話すわよ、葉のいる時に、約束する」



沙里さんはようやく納得したらしく、重々しくうなずいて、承諾の意を示す。

葉さんの、自由なのになんだかちゃんとした感じは、こういう教育によって形成されたんだなあと思った。



「リハビリ、続くかしら、朋枝ちゃん、見ててやってね、あの子は興味のないことに、熱意が持続しないから」

「はい、葉さん、前向きでしたし、きっと大丈夫なんじゃないでしょうか」



そう言ったら、沙里さんが少し黙った。

あれっと口をつぐむ私に、優しく笑う。



「それはたぶん無意識に、すごく頑張ってるのよ、朋枝ちゃんの前だから」

「男の子って大変ね、かっこつけたがりで、遺伝かしら」



かもね、と沙里さんが苦笑する。



「葉さんて、あんまりそういう区別、ないのかと…」

「さすがに、心の底では不安で仕方ないはずよ、大きな怪我をしたこともないし、身体はあの子の商売道具だもの」



そんな。

だって、全然そんなところ、見せなかった。

明るくて、マイペースで、やんちゃで。



「加塚くんがね」



沙里さんが、ふとそんな名前を出したので、なんだかうろたえてしまった。



「葉を、泣かせてやってくれてるんじゃないかな」



口元に浮かぶかすかな微笑みは、さみしげにも、温かくも見える。

エマさんが何気なく言った。



「まるで恋人ね」



どっちのですか、と訊きたくなった。

沙里さんは変わらず、優しく微笑んで。


何も応えなかった。



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