グリッタリング・グリーン


「こんばんは、朋枝さん」



振り向くと、黒のシンプルなドレスを着たエマさんが微笑んでいた。

特に露出が多いわけでもないのに、身体のラインがきっちり見えて、色っぽい。



「マサキと話せた? 人気者で、全然空かないわね、せっかくの打ち上げなのに」

「スタッフさんと久しぶりにお会いできたので、それだけでも」



慧さんが招待してくれた“打ち上げ”は、当初イメージしたような飲み会ではなく、クライアントも招いての、盛大なパーティだった。

ポートエリアに建つバーを借りきっての催しだ。



「そのドレス可愛いわ、よく似合う」

「ほんとですか、これしか持ってないんです」



そんな場だと知って、慌ててクローゼットの奥から出したシャンパンベージュのワンピースだ。

去年、従姉の結婚式のために買ったものだ。

着てくるものがあってよかった、本当に。



「葉が絶対喜ぶわ、そういう女の子らしいの好きだから」

「葉さんがいらっしゃるんですか?」



この企画には、関係ないのに?

エマさんは、ちょうどいらしたところよ、と私の背後を顎で示す。


振り向くと、会場を見回しながら入口をくぐった人影が、こちらに気づいたところだった。

人混みをすりぬけながら、駆けてくる。



「よかった、意外に広くて、会えないかと思った」

「あ、はい」



何その返事、と葉さんが不審そうにする。

私は、顔を赤らめないようにするので精一杯だった。


だって葉さん、かっこいい。


黒いカットソーに黒い細身のパンツを合わせて、これまた黒のジャケットを羽織ってる。

七分丈にまくりあげた袖が彼らしくカジュアルで、でも胸ポケットの青いチーフが、差し色として品よく際立っていて。

そして革靴だ。

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