グリッタリング・グリーン
誰もがあっけにとられてそちらを見るうち、ショッピングビルがひときわ大きく輝きを放って、白と金色のまばゆい光の箱と化した。


インスタレーションだ。


私は驚きと感動のあまり、寒さも忘れて目の前の現代アートに見入った。

いつの間にか広場は、いやおうなしに心を弾ませる、ジングルの音楽に包まれている。


その音に合わせて、ショッピングビルの外壁がゆるりと輝きを変える。

白から金へ、目の錯覚かと思うくらいシームレスに色が変化し、少し懐かしいセピアまで落ちた後、また白へと戻っていく。


幻想的なツリーは、ほの白い銀色の輝きを放ちながら、夜空を背景に悠然とそびえたっている。

風に揺れる葉っぱも幹も、アクリルのような透明な素材でできていることに私は気がついた。

枝が揺れるたび、キラキラとかすかに優しい音がする。


誰もがこの空間の芸術に心を奪われ、時間も忘れて魅入っていた。

あまりの美しさに、涙が出そうになる。

その時ふと、横に立つ人影に気がついた。



「葉さん…!」

「お待たせ」



なんでこんなところに、と言おうとして、そもそもが待ち合わせだったことを思い出す。



「ね、最初の、このツリーが現れたの、見てました?」

「見てたよ」

「感動しませんでした? 街中で、ここまで大がかりで印象的なインスタ、私、初めて見ました」

「ありがと」



ありがと?

夢中で話しかけていた私は、その反応に首をひねった。

葉さんはいつもの黒いダウンにデニム姿で、にやにやと私を見ている。



「俺を、イラストレーターだと思ってた?」

「えっ…」

「こっちが本業だよ」



再び、えっ、と間抜けな声をあげながら、ツリーと彼を交互に見る。

…これ、手がけたのが、葉さんだってこと?

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