グリッタリング・グリーン
最初に知ったのが、イラストレーターとしての葉さんで、今も仕事をしているのは、そっちの葉さんとだから。
私には、葉さんは、絵を描く人だ。
「まさか、俺の原点だもん」
「描いてください」
「酒が抜けたらね」
言い聞かせるように、ぐずる私の頭をなでてくれる。
絶対描いてね、葉さん。
私だけの絵。
約束するよ、って、そんな感じに葉さんは。
私の顎を持ちあげて、柔らかいキスをくれた。
結論から言うと、その日私は、帰らなかった。
特に何があったわけでもなく、お手洗いから戻ったら葉さんがつぶれていて。
寝顔を眺めているうちに、私も寝てしまっただけだ。
まぶしさに目を開けると、白い光の中で、葉さんがイーゼルの前の四角い椅子に座っていた。
組んだ脚の上にスケッチブックを置いて、くわえ煙草で鉛筆を走らせている。
私が目を覚ましたのを見てとると、にこっと笑って、足元の一枚を、こちらに泳がせてよこした。
酔いも寝ぼけも、吹っ飛んだ。
「葉さん!」
「描けって言ったじゃん」
あたりに散らばるスケッチは、どれもこれも、あられもなく寝入っている私。
ただの似顔絵なら、恥ずかしいだけで済むんだけど、なぜか全部、動物の要素が変な具合に混ざってる。
羊とか、パンダとか、リスとか。
それでも私だとわかるんだから、さすがの画力と言うしかない。
屈辱的すぎる。
「これ、一番気に入ったやつ、あげる」
描いていた一枚を、葉さんが破りとった。
慎重に受けとって、確認して。
私が真っ赤になったのは、なんのせいだったろう。
怒り? 羞恥?
「あいつと交換ね」
葉さんが指したデスクの上には、あの黒猫が飾ってあり。
渡された白い紙の真ん中では。
サテンのワンピースを毛布がわりに、子豚が一匹、幸せそうに眠ってた。
私には、葉さんは、絵を描く人だ。
「まさか、俺の原点だもん」
「描いてください」
「酒が抜けたらね」
言い聞かせるように、ぐずる私の頭をなでてくれる。
絶対描いてね、葉さん。
私だけの絵。
約束するよ、って、そんな感じに葉さんは。
私の顎を持ちあげて、柔らかいキスをくれた。
結論から言うと、その日私は、帰らなかった。
特に何があったわけでもなく、お手洗いから戻ったら葉さんがつぶれていて。
寝顔を眺めているうちに、私も寝てしまっただけだ。
まぶしさに目を開けると、白い光の中で、葉さんがイーゼルの前の四角い椅子に座っていた。
組んだ脚の上にスケッチブックを置いて、くわえ煙草で鉛筆を走らせている。
私が目を覚ましたのを見てとると、にこっと笑って、足元の一枚を、こちらに泳がせてよこした。
酔いも寝ぼけも、吹っ飛んだ。
「葉さん!」
「描けって言ったじゃん」
あたりに散らばるスケッチは、どれもこれも、あられもなく寝入っている私。
ただの似顔絵なら、恥ずかしいだけで済むんだけど、なぜか全部、動物の要素が変な具合に混ざってる。
羊とか、パンダとか、リスとか。
それでも私だとわかるんだから、さすがの画力と言うしかない。
屈辱的すぎる。
「これ、一番気に入ったやつ、あげる」
描いていた一枚を、葉さんが破りとった。
慎重に受けとって、確認して。
私が真っ赤になったのは、なんのせいだったろう。
怒り? 羞恥?
「あいつと交換ね」
葉さんが指したデスクの上には、あの黒猫が飾ってあり。
渡された白い紙の真ん中では。
サテンのワンピースを毛布がわりに、子豚が一匹、幸せそうに眠ってた。