グリッタリング・グリーン

真っ暗闇から、極彩色へと見ている人をいざなう。

葉さんが見せてくれたのは、そんな世界だった。


スポーツウェアを身にまとって、アクロバティックに力強く動くダンサーと。

画面中をキャンバスに、まばゆい色彩を展開していくアーティストが、ひとつの空間で交錯する世界。


ぶつかってくるような生命力。

躍動感。


心が揺さぶられて、涙が出た。





わああ、と口の中で叫んだ。

CFが公開されたことで「あれ誰?」の動きがWEB上で起こり、葉さんの昔の写真が流出しはじめたのだ。


あのCFの何がすごいって、CG処理をいっさいしていないところで、業界でも話題になった。

光も影も極彩色も、すべて、現場でのパフォーマンス。

グラフィックに至っては、本当に即興で描いてたと言うんだから、もう尊敬の言葉しかない。

葉さんのつくりだしたその場限りのアートを、最高の形で監督が映像に残した、ふたりの共同の傑作だ。


そしてどこからかWEB上に現れ、検索すると出てくるようになった、数年前の葉さんの写真が、もう。



「か、可愛い…」



PCを前にして、独り言が漏れるくらい。

元は、当時のエージェンシーが公開したものなんだろう、同じテイストの、白黒の写真が数種類。

ぼんやりと視線を落としてたり、何かの制作中だったり。


一番流出しているのが、無邪気に顔をくしゃっと歪ませて笑ってる、アップの写真だ。

たぶん18歳くらいだろう、たった5年前だけど、今よりもさらに華奢であどけなく、若いぶん、生意気さが前面に出てる。

これは、例のエージェンシーばかりを責められないかもしれない。



「まさに、極東のキュートボーイって感じだろ」

「一部に受けてしまったのも、わかりますね…」



部長が、私の独り言に足をとめてくれた。

昼食後の一服に行くらしく、煙草を片手に、懐かしそうに画面を見つめる。



「このせいだけじゃないけど、葉は海外でのほうが、名が知られてる、それも今回で、変わるかもね」



微笑む横顔には、純粋な誇らしさと、愛情が浮かんでる。

その想いは、葉さんだけじゃなく、同時に慧さんと沙里さんにも向けられるもので。


こんな形の愛もあるんだと、ようやく知った。

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