グリッタリング・グリーン
いえ…と首を振る。

葉さんのアトリエになんて数えきれないほど行ってるし、差し入れもたびたびしてる。


つまり、記憶に残るほどあきれたってことだろうか。

もうやだ、という気分でそう訊くと。


違うよ、と葉さんが笑った。



「一緒にいたら楽しそうだなあって、思ったんだよ」



この笑顔、好きだなと思った。


無邪気なのに、すごく優しくて。

守ってくれてる気がして、安心する。



海からの風が、茶色い髪を揺らした。

その髪の毛が、果たして見た目どおりに柔らかいのか確かめたくて手を伸ばすと。

不思議そうにしながらも、なでさせてくれる。

その手を、葉さんが握った。



「そういうことだよ、わかる?」

「え?」

「構えること、ないんだよ、ただ一緒にいたいって、それだけなんだからさ、でもやっぱり、俺も男だから」



甘えるみたいに、私の手に口をつけて、にこっと笑う。



「好きな女の子といたら、届くとこ全部さわりたいし、見せてほしいし、一緒に気持ちよくなりたいと思うわけ」



それだけだよ、と何がそんなに嬉しいのってくらい、楽しげに。


全然“だけ”じゃないです、私には。

そんな抵抗をする気もなくなるくらい、無邪気な顔には、好きだよ、と書いてあったので。

さすがの私も、なんだか楽になった。


卑屈な気持ちの時もあった。

今でも、葉さんの評価に触れるたび、こんなすごい人と一緒にいるのが、私でいいのって思う。

たぶんこれからも思う。


でもきっと、思ってもいいんだと、思う。

私にとっては、そんな揺れも、好きって心の表れ。



「葉さんも、全部見せてくれます?」

「たとえば?」

「痛いとかつらいとか、感じたら教えてくれますか」

「やだよ、かっこ悪い」

「………」



何それ。

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