グリッタリング・グリーン

「人には、恥ずかしがるのがいいとか言っといて…」

「それとこれとは、話が別だろ」

「同じです」

「じゃあ痛いしつらくてたまんないって言ったら、このまま抱いてい、いてっ!」



バカじゃないの!

引っこ抜く勢いで髪を引っ張った私を、むっとした顔が見おろした。



「言っとくけど、あんまり待たせると知らないよ、俺、暴走するからね」

「暴走ってなんですか」

「その時わかるよ」



なんですかそれ、と言い返そうとしたのは、重なってきた唇に阻まれて消えた。

でも、ぴったりと合わさった身体から伝わってくる、鼓動と熱で、聞かなくてもなんとなく、わかった。



首に腕を回すと、唇をくっつけたまま、嬉しそうに笑う。

ぎゅっと抱きしめてもらって、同じだけ私も返した。



こういうこと。

一緒にいたいって、きっとこういうこと。



その瞬間の、空気とか匂いとか温度とか。

全部共有して、同じものを身体に入れるの。



大地を震わす音がした。

見あげると、銀色の機体が、ぐいぐいと空をのぼっていくところだった。


俺、離陸の瞬間って、大好き。


まぶしそうに見ていた葉さんが言った。



他には?

ねえ葉さん、他に好きなものは?


全部教えて。



回した腕で、要求を伝えると。

少し驚いたように眉を上げて。


優しく微笑んで、望んだとおりのキスをくれる。




目を閉じる直前に映ったのは。


風に揺れる髪と、青い空。

真っ白に輝く太陽。



木漏れ日と、枝葉がつくる優しい影。




明日も明後日も、きらきらした日が訪れるって。

そう約束してくれているような。



一面の、輝くグリーン。








Fin.

──Thank you!


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