グリッタリング・グリーン
そうか、残念。

でもVJをしていたってことは、イラスト以外もやるってことだ。

ニックの見た彼が、榎本葉であるとは限らないけれど。

おそらく同一人物であると、私の勘が告げていた。





また、えらい可愛いのが来ちゃったわね。

初対面の印象は、そんなだった。


彼の高校卒業を控えた、ある冬の日。

小奇麗なニットとジーンズで現れた彼は、居心地の悪さを隠そうともせず、その虚勢を張らないところが、好感を誘った。



「座ってちょうだい、飲み物は何がいい?」

「なんでも」



示したチェアにすとんと座り、きょろきょろしながら答える。

子ども扱いしないほうがいいだろうと、ジュースなどは避けて、コーヒーを出すことにした。

テーブルに置いてある画集などをぱらぱらとめくって待つ様子を、横目で観察する。


事前のメールのやりとりで、プロフィールはあらかたもらっていた。

18歳、高校3年生。

子供時代は、NYと東京を行ったり来たりして過ごす。

確認したところ、ニックが訪れたイベントでVJをしていたのも、確かに彼だった。

さすがオタクのアンテナはすごいわ、と改めて感心した。


でもニック、顔は見ておくべきだったわね。

湯気をたてるカップを彼の前に置くと、どうも、とそっけない返答があった。

その造作は、一見の価値がある。


大きな目、長いまつげ。

伏し目がちで、全体的に、いつもどこか眠たげな、とろんとした表情をたたえている。

整っているけど、少し生意気そうな鼻筋と唇。

肌も白くてすべすべと綺麗で、彼のほうがまるで、描かれた何かみたい。


身体もバランスがいい。

私と同じくらいの背丈しかないけれど、使いこんでいそうな、神経の行き届いた身体。



「何かスポーツをしてる?」

「サッカーとか、フットサルとか、たまに」

「学校の友達と?」


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