グリッタリング・グリーン
来られる? と首をかしげる部長の顔は、我慢しきれず笑ってた。

そりゃそうだ、私は真っ赤だっただろうから。



「来るみたいだ、店決めたら連絡するよ、じゃあ」

「部長、私、お邪魔じゃ…」



何かふたりの話があったんだろうに。

あせって言い募ると、携帯を閉じながら部長が首を振る。



「久しぶりに会いたくなっただけだから、むしろ誰か他に呼んでもいいよ、生方もひとりじゃ心細いだろ」

「でも、葉さんが嫌がりませんか」

「あいつも、もっと社交性を身につける時期だからね、甘やかしちゃダメだよ、生方」



大量の校正用紙を抱える私をにこりと見下ろして、部長はフロアへと入っていった。

葉さんのお父さんのお友達だという部長は、不思議なほどに葉さんと仲がいい。

クリエイターとして認めてもいるのに、こんなふうに第二の保護者みたいな態度をとることもあって、なんともつかめない関係のふたりだった。



「何それ行きたい、でも今日は先約があるんだあ」



悔しいーと隣の席の未希(みき)さんが、綺麗な黒髪を無造作にかき回した。



「お友達のライブだって言ってましたもんね」

「そうなのよー、いいなあ、そういえば私、部長と彼が一緒にいるところを見たことないのよ」

「私もです」



校正紙を広げるために場所を移しながらうなずいた。

そういえばそうなのだ。

仲がいいのは知っていても、ふたりが一緒のところを見たことはない。



「まあ私が行っても、何も喋ってくれなそうだしなあ」

「きっとすぐ打ち解けると思うんですけど」



数年先輩の未希さんは、ふふっと笑って私を見る。

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