グリッタリング・グリーン
「お前の仕事もまた特殊だからなあ、値段張っても、包括的に見てくれる人じゃないとな」
「面白い人がいいな、細かいこと気にしないタイプの」
「それじゃ税理士として失格だろ」
一見してわかる。
このふたり、本当に仲がいいんだ。
だって葉さんが、甘えてる。
立てた片ひざに煙草を持った腕を置いて、くつろぎきった様子で、部長に身を寄せている。
顔もいつもの仏頂面じゃなくて、にこにこと楽しげで…と観察したところで気がついた。
「葉さん、あんまりお酒強くないんですか」
「わかる?」
「あんまりどころか、相当弱いよこいつ。でもほっとくと次々飲むから、気をつけててやってね」
「生方は、強い?」
「そうですね、普通かと…」
葉さんがはいと手渡してくれたドリンクメニューをひととおり見て、そばにいた店員さんにビールを注文する。
ムートンのコートを丸めて脇に置く私を、なんでか葉さんは、機嫌よくグラスを舐めながら眺めていた。
「クリスマス以来だね、仕事以外で会うの」
「は…」
はい、と答えようとしたところで、部長の視線を感じて頬が熱くなる。
葉さん、本当に、とりつくろわなすぎです…。
「クリスマスは楽しくすごせたの? 葉がごちそうしてくれたんでしょ」
「はい、すごく素敵なレストランで」
「何度も言うけどあの食事はタダだよ、ねえあそこのビルさ、中を一新したね、加塚さん、行った?」
「いや、昔行ったきりだな、俺が遊ぶには若すぎて」
「と思うじゃん、それがね、全体的にグレードアップしてて雰囲気いいんだよ」
「あのビル」で通じるってことは、私と葉さんがどこで食事したかも部長には伝わってるってことだ。
仲よすぎでしょ、と若干恐ろしくなりながら、次々運ばれてくる料理とお酒を楽しむ。