グリッタリング・グリーン
「…いえ、私のほうこそ、すみませんでした、その、大きな声出して」
「生方、けっこうすぐ怒るんだ」
感心したような口ぶりに、誰のせいですか、と言いたくなったのを、ぐっとこらえた。
葉さんは、しげしげと私を眺め、うん、とひとりで何か納得して、右手を差し出す。
「一時休戦ね、見送り嬉しい、ありがとう」
にこやかに微笑んだ顔と、その手を何度か見て。
おそるおそる、私も右手を出した。
「行ってらっしゃい、お気を」
つけて、と言う前に。
握手した瞬間、その手を強く引っ張られて、気づいたら私は葉さんの腕の中にいた。
えっ?
えっ?
大混乱に陥った私を、両手でぎゅっと抱き寄せて、葉さんが笑ったのがわかる。
「俺、あんまり驚かなかったと思わない?」
「は…え?」
「生方がさ、いきなり空港に来たっていうのに、そんなに驚いてなかったでしょ」
そういえば…。
実は今空港なんです、と伝えたら、すぐに、どこにいるの、と来た。
「少し前に加塚さんが、教えてくれたんだよ、もしかしたら生方が空港に行くかも、行かないかもって」
「えっ!」
何それ、恥ずかしい!
かあっと顔に血がのぼって、きっとそれが伝わったんだろう、葉さんがくすくすと楽しげに笑う。
「来たから、俺の勝ち」
「部長は、来ないほうに賭けてたんですか」
「別に何も言ってなかったけど、でもどう考えたって俺の勝ち」
「負けた人がいないなら、葉さんだって勝ってないです」