グリッタリング・グリーン
「つーわけなのよ、よりいいアイデアあれば、大歓迎だから、はいじゃ開始」
パンと聖木氏が手を打ち鳴らすと、その場にいた10名ほどの人たちが持ち場についた。
バスケットボールでもできそうな、広大なアトリエの端にある、大きな楕円の木製テーブルが作業台らしい。
今日は見学、と言われていた私は、隅っこに移動して、手伝えそうな作業を探す。
「嬢ちゃん、勝手がつかめたら、好きなとこに割りこんじゃってよ、みんな知った仲だから、なんでも説明してもらって」
「はい、もう少し見学させていただいてもいいですか」
「いいよ、でも思ったことがあればどんどんアピールしてね、俺はそういう職場が好きだから」
はい、と言う前に、聖木氏はテーブルのひとつへ行き、作業をチェックしはじめた。
私はその場のアグレッシブな空気に、完全に気圧されて、壁際で気配を消した。
ここは聖木氏の、新たな作品がまさに生まれようとしている場だ。
常時、数名のアシスタントを率いている彼は、今回それだけでは足りず、あちこちから人を集めているらしい。
元は倉庫らしいアトリエの、大きな鉄の扉が少し開いて、加塚部長が入ってきた。
すぐに私を見つけて、微笑みながらやってくる。
「どう、こういう現場、学生時代を思い出して懐かしいんじゃない?」
「はい、でも私は個人でばかり制作していたので、なんだか圧倒されます…」
「どんどん人数増やすらしいから、埋もれないよう、食いついてかなきゃダメだよ」
うわあ、部長までそんなこと言うの。
ただでさえ自己PRが得意でない私は、すっかり萎縮してしまう。
元はと言えば、ここに私がいるのも、部長の推薦があったからなのだ。
『私が、ですか』
『うん、もちろんクリエイティブからも何人か出すけど、生方にもぜひ、慧の制作に触れてほしくて』
『私でいいんでしょうか』
『いいも悪いも、そんなのはやってみなきゃ、わからないからね』