グリッタリング・グリーン
フォローでも後押しでもない言葉に、激しく躊躇する私を、部長はおかしそうに笑った。



『俺は、いけると思ってるよ、挑戦してくれたら嬉しい』



私はまだまだ甘ったれだ。

そんなひと言で、やってみる気になるんだから。



──というわけで、ここにいる。

業務時間外で、という約束なので、基本的には平日の夜と土日だけの参加だ。


いくつかのグループに分かれて作業している人たちを、観察した。

PCを前にしている、プログラミング部隊。

壁に貼った模造紙に、枠組みのレイアウトをいくつも描いてディスカッションしている、制作部隊。


基本的には、20代から30代くらいの人たちの集まりで、男女は半々。

誰もが意欲的で楽しそうで、早く混ざりたいような、腰が引けるような、だ。



「加塚くん、来てたの」



そこに、ふいに女性の声がした。

木張りの床に、コツコツとヒールの音をさせて近づいてくる、いかにもビジネスウーマン然とした人。



(わあ!)



私の目は、その顔に釘付けになった。

部長が親しげに、よう、と片手をあげる。



「お前こそ来てたんだな」

「今日が現場的なキックオフだもの、見とかないとね、こちらのお嬢さんは?」

「俺の部の社員だよ、今日からここで世話になる」

「生方と申します」



勢いよく頭を下げた私に、女性がにこりと微笑む。

紹介されるまでもなかった。

賭けたっていい、葉さんのお母さんだ。

心中を察したのか、部長が笑う。

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