グリッタリング・グリーン
「似てるだろ」
「信じられないくらいです」
そうなのよ、と困り顔をする沙里さんは、端的に言えば、女性の恰好をした葉さんで。
大げさに言っても、女性の恰好をした葉さんだ。
印象的な、伏せがちの大きな目に、長いまつげ。
華奢な顎のラインと、ちょっと気の強そうな感じを受ける鼻筋、ふっくら整った唇。
違うのは年齢と、仏頂面じゃないところくらい。
「あの子は、今ヨーロッパなんだっけ?」
「そうだよ、エキシビションの準備でジュネーブ」
「サプライズで見に行って驚かせようかな」
「やめてやれよ、息子の職場に…」
渋い声を出した部長の胸ポケットを、沙里さんが綺麗な爪でつついた。
「煙草、遠慮しないでいいわよ、ここみんな吸うから」
「あ、ほんと?」
サンキュ、と笑った部長が。
突然の接触に、ほんの一瞬、動揺していたように見えたのは、気のせいだろうか。
「沙里よお、あとの人員、今週でどのくらい集まる?」
そこに、聖木氏が加わった。
そうね、と沙里さんが考えこむ。
「あなたが欲しいって言ってた人数の、7割かな」
「もう少しまけねえか、けっこう手応えあるからさ、思ってたよりさらに面白いことできそうなんだよ」
「わかった」
すぐに沙里さんは携帯をとり出して、少し離れたところで何本かの電話をした。
ぽかんと見守る私に、部長が説明してくれる。
「沙里は慧のマネージャーなんだよ」
「わあ、素敵ですね、ご夫婦でそういうの」
「なあに、円満別居状態で、やっとこ大喧嘩を免れてるって具合だよ」
「え…」