グリッタリング・グリーン

携帯の振動を感じた。

もう朝かあ、ととっさに考えたものの、目を開けると部屋は電気が煌々と灯っていて、外は暗い。

時間を知ろうと携帯を見て、着信だったことに気づいた。

見慣れない数字の列。



「はい」

『生方? 俺』



一瞬考えて、跳ね起きた。



「葉さん!」

『あれ? そっち、もう寝るような時間?』

「いえっ、ちょっと、うとうとしてました」



やだ、電話でもわかるくらい、寝ぼけた声を出してたんだろうか。

ここのところ毎日、仕事のあと夜遅くまで聖木氏のアトリエで過ごす生活で、くたびれていたらしい。

ベッドの上で正座する勢いで、極力しゃんとした声を出すよう努める。



「何かご連絡ですか?」



渡欧してから、特にメールももらっていなかったので、突然の電話に緊急の用件かと思い、尋ねると。



『声聞きたくなっただけだよ、元気?』



さらりと返ってきた答えに、顔が熱くなった。

そんな理由で、海外から電話をくれちゃうんですか。

5月までこのさみしさに耐えなきゃなんて思ってた私が、バカみたいじゃないですか。



「はい、葉さんは」

『変わんないよ、今は眠い、気抜くと落ちそう』

「お忙しいんですか」

『休むの忘れてたんだ、今、24時間ぶりくらいで大休止入れたとこ』



みんな遊んじゃって、誰も休んでないけど、とあきれたように言う葉さんから、まとめ役っぽさが感じられて、新鮮だ。

いっつもひとりのイメージだったのに、と考えたところで思いついて、写真を送ってくださいとねだってみた。

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