グリッタリング・グリーン
ん、と言いかけた彼が、何かに驚いたような声をあげた。

はずみで携帯を落としたらしく、ふざけて争っているのが遠くに聞こえる。

そのやりとりは。


英語だ。



『ごめん、写真撮った奴がね、感想聞けとか言うから』



そこでまた鬱陶しそうに何か、電話の外に向かって言う。

ちょっかいを出してくる友達に対して、うるさいな、的なことだろう、たぶん。

やっぱり…とちょっと呆然としながら、それを聞いた。



「葉さん、お友達って、みなさん、そちらの方ですか」

『そちら? いろんなとこから集まってるよ、多いのはUSかな』

「葉さんて、英語、話すんですね」



一瞬、言葉に詰まったような間が空く。



『俺、半分、アメリカ育ちなんだ』



えっ!

という声を、飲みこんだ。

なぜか、葉さんの声が妙に恥ずかしそうだったからだ。



「東京ご出身だと思ってました」

『生まれたのはね。高校に上がるまでは、あっちとこっちを行ったり来たりして、トータル8年くらいは向こうに住んでた』



だから“半分”アメリカ育ちなのか。

でもそれがどうして、こんなに恥ずかしそうなの?



「お父さんのお仕事の関係ですか?」

『まあ、そうなんだけど、結局は、アーティストたるものNYに住むべし、みたいなくだらない発想…』



どうやら本気で体裁が悪いらしく、聞いたこともないくらい声が弱々しい。

海外暮らしの経験があって、英語がネイティブ並みに話せるなんて、かっこいいし便利だろうし、誇ってもいいだろうに。

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