グリッタリング・グリーン
言葉を探した。

けど、どう婉曲に表現したところで事実は変わらないことに気がついて、正直に説明した。


聖木慧氏のプロジェクトに加わらせてもらっていること。

お母さんと、そこで会ったこと。


葉さんは黙って聞いている。

顔を見られず、気づくと視線は、テーブルに落ちた。


終わっちゃった。

ちょっと浮かれた、お帰りなさいっていう時間。



「いつから?」

「先月の…はじめ、です」

「じゃあ、そのあと電話、何度かしたじゃん、なんで何も言わなかったの」



わざわざ話すことでもないかと思って。

自分のことより、葉さんの話を聞きたくて。


いくつか返事が浮かんだけど、全部言い訳だった。



「俺が怒ると思った?」



はい、ごめんなさい、葉さん。

別に隠しているつもりもなかったけど、こうして目を見られないのが、やましい証拠だ。


葉さんがあれだけ毛嫌いしているお父さんのもとで、手伝いながら勉強させてもらう。

葉さんを裏切っているような気持ちが、どこかにあって。

言わずに済めばいいって思ってた。


葉さんが、煙草の灰を叩いて落とす。



「俺、そんなので怒らないよ」



その声が、あんまり静かだったので、目を上げると。

葉さんは、眉をひそめて、私を見てた。



「怒んないよ、だって生方が、やりたかったんだろ?」

「葉さん…」

「俺は親父と仲よくないけど、生方のしたいことを邪魔したりしないよ、非難もしない」



だからさ、という声が、ふたりの間に落ちた。



「話してほしかったよ」



葉さん、ごめんなさい。

信じてなかったわけじゃないんです。

< 89 / 227 >

この作品をシェア

pagetop