グリッタリング・グリーン
結局、エマさんのほうが上手だったってことなのか。
“仕事の”と言われたら、真面目な葉さんは、自分にそれを阻む権利はないと考えてしまう。
嫌だ、なんて言えなくなってしまう。
エマさんが名刺を渡した。
有名なエージェンシーらしく、慧さんが眉を上げる。
「もう他社とつきあいがあることは知ってるわ、たっぷり比較してもらってかまわない、あなたと契約したい」
「あそこには個人的な義理があるってだけで、俺はそもそも、エージェントなんてもんは」
「日本は、エージェントというものに懐疑的すぎる」
慧さんの顔が露骨にしかめられた。
「それが嫌なら来るなよ」
「私たちはこの国に、代理人というビジネスを根づかせたいの、力を貸して」
渡されたクリアファイルを、ぱらぱらと眺めた慧さんが、目を見開く。
「そのブランドが、クリエイターを探しているの、あなたを紹介するつもり」
「マジかよ、やるやる、契約する」
軽、とびっくりしたけれど、案外歴史的なコラボレーションなんて、こんなノリで決められているのかもしれない。
なんのブランドかな、とのぞこうとした時、慧さんが困ったように訊いた。
「これ、スケジュールは? 俺、今のが終わっても、しばらく空かねーんだけど」
「スポーツブランドのCFでしょう? 彼らも私たちと取引があるから、実は内々で話をしてあるの、あなたが」
それを、とファイルを指さして、美しく笑う。
「受けてくれるなら、CFのほうは他のクリエイターにスライドさせてもらうつもり」
「身体がふたつありゃ、両方やりたいよ、くそ」
「まあ、そのクリエイターがOKしてくれればだけど」
「こんな話、嫌って言う奴がいたら見てみたいぜ」
「見られるかもよ」
エマさんに誘われて、全員の視線が集中した。
くわえ煙草で話が終わるのを待っていた葉さんが、目を見開く。
“仕事の”と言われたら、真面目な葉さんは、自分にそれを阻む権利はないと考えてしまう。
嫌だ、なんて言えなくなってしまう。
エマさんが名刺を渡した。
有名なエージェンシーらしく、慧さんが眉を上げる。
「もう他社とつきあいがあることは知ってるわ、たっぷり比較してもらってかまわない、あなたと契約したい」
「あそこには個人的な義理があるってだけで、俺はそもそも、エージェントなんてもんは」
「日本は、エージェントというものに懐疑的すぎる」
慧さんの顔が露骨にしかめられた。
「それが嫌なら来るなよ」
「私たちはこの国に、代理人というビジネスを根づかせたいの、力を貸して」
渡されたクリアファイルを、ぱらぱらと眺めた慧さんが、目を見開く。
「そのブランドが、クリエイターを探しているの、あなたを紹介するつもり」
「マジかよ、やるやる、契約する」
軽、とびっくりしたけれど、案外歴史的なコラボレーションなんて、こんなノリで決められているのかもしれない。
なんのブランドかな、とのぞこうとした時、慧さんが困ったように訊いた。
「これ、スケジュールは? 俺、今のが終わっても、しばらく空かねーんだけど」
「スポーツブランドのCFでしょう? 彼らも私たちと取引があるから、実は内々で話をしてあるの、あなたが」
それを、とファイルを指さして、美しく笑う。
「受けてくれるなら、CFのほうは他のクリエイターにスライドさせてもらうつもり」
「身体がふたつありゃ、両方やりたいよ、くそ」
「まあ、そのクリエイターがOKしてくれればだけど」
「こんな話、嫌って言う奴がいたら見てみたいぜ」
「見られるかもよ」
エマさんに誘われて、全員の視線が集中した。
くわえ煙草で話が終わるのを待っていた葉さんが、目を見開く。