グリッタリング・グリーン
目の前に立つエマさんに、視線を奪われたまま。

葉さんは、動けなくなったみたいに、立ちすくんで。

いつの間にか落とした煙草から、細い煙が舞っていた。


その時、外からにぎやかな気配がした。



「お疲れー、ねえ見て、差し入れにね…」



陽気に入ってきた沙里さんが、葉さんとエマさんを見て、足をとめる。

うしろには加塚部長もいて、沙里さんと同じように、立ちすくんだ。



「沙里さん、お久しぶり」

「ハイ、エマ、いつ日本に来たの」



つい昨日よ、と笑むエマさんと軽くハグをしてから、沙里さんは葉さんのそばに寄った。

腕にそっと手をかけて、微笑みかける。



「お帰りなさい、葉、お疲れさま」



葉さんの緊張が、ふっと解けたのがわかった。



「ただいま、ごめん、今日母さんと会えると思わなくて、お土産持ってきてない」

「日持ちしないものなら、とりに行くわ」

「来なくていいよ、ワインだもん」



ふたりが笑い声をたてる。



「今度、それに合う夕食をつくるわ、その時持ってきて」

「了解」



ようやく息ができるようになった気がして、ほっとした。

葉さんも部長たちの登場で安心してるのが、わかる。



「エマと、なんの話してたの?」

「新しい仕事の話」

「え?」



沙里さんは、なぜかふと顔を曇らせて、エマさんを振り返った。

葉さんが苦笑して、なだめるようにその肩を叩く。



「いい話なんだ、俺は受けるよ、エマ」

「本当? 葉、ありがとう!」


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