王子様の献身と憂鬱
その言葉にちくりと胸が痛む。季節の移り変わりと共に、彼女が彼と共に過ごす時間を増やしている事は気づいていた。
『夜の無防備な彼女を知らないだろ。ノーメイクだって可愛いんだぞ』
確かに残念ながらプライベートタイムの彼女と顔を合わせる機会は僕にはない。けれどオフィスでの彼女だって違う意味で可愛い。仕事を頑張る彼女は充分に魅力的だ。
『君は人前で紹介された事ないだろう。所詮その程度の人には言えない関係じゃないか』
そもそも彼と僕とでは立場が違う。
彼は陽の当たる場所を歩けない。あくまで日陰の身だ。どんなに仕事の効率を誇ったって、オフィスでは基本出番はない。なので巧妙にそのコンプレックスを突いてやるのが僕に出来る反撃だ。
そしてその瞳が虎視眈々と僕の立場を狙っているという事も僕は知っている。まあ無理だろうけれど。無理だろうと思ってはいるけれど。……ほんの少しだけ。彼が四六時中彼女と共にいる権利を得て、いつか僕の方が切り捨てられるかもしれないという不安もあったりもする。あくまでほんの少しだけ。
『……嫌味なやつだな』
どっちが。