王子様の献身と憂鬱
お互いに抱くコンプレックス。相手への嫉妬。羨望。
けれど結局の所、僕達は彼女を癒やしたい、守りたいという一点において目的が一致している。
その肌に触れ、潤わせてその体温と同化したい。とびきりの笑顔が見たい。
それだけが僕達の唯一絶対の役割であり、望みなのだ。
* * *
「あー疲れた。お腹空いたー。ったく何で金曜だってのに残業なんかしなくちゃいけないの」
「だよねー。急ぎの修正とか言いつつ部長も課長もさっさと帰るしマジムカつく」
殆ど人気のなくなったオフィスは半分照明を落とされ、それが余計に侘びしさを増長させる。
「やる気出なーい」
そう言いながら彼女は手を止めてデスクの上に顔を伏せた。
散らばった書類にメイクや皮脂がつかないようにちゃんと避けてから、というのが腐っても社会人だ。