王子様の献身と憂鬱
「昼間はシャキッキリッと仕事してた癖に映見ってばだれ過ぎ」
「だって増永さんいたら少しでも印象良くしたいからやる気も出るよ。でももう無ー理ー。仕事したくない……」
そう言いながら彼女は隣の綺麗に片付いたデスクに目を向ける。
同じ部署の先輩である増永は彼女の憧れだ。彼がすぐ横にいるからこそ普段は面倒臭い仕事もニコニコ笑ってこなす事が出来る。なので不在だと気力が半減するのも当然だった。
「サボってると終わんないよー。あたしあと少しだから先終わったら置いて帰るからね」
「やだ、ちょっと待って。こっちももう少しだし、終わったらご飯食べて帰ろうよ」
「映見の仕事がちゃんと終わったらね。待つのは嫌だから」
「やるやる、やるから置いて帰らないでー!」
そう言いながら彼女は慌てて目の前の書類に手を伸ばす。けれどつまみ上げようとしたそのコピー用紙はするりと指先を滑って床に落ちた。
「……ああもう!」