あなたは今夜、私のものになる。【ぎじプリ】
ふたりきりのオフィスで
「すみません、それじゃ、お言葉に甘えて。お先に失礼します」
三年年下の後輩社員が、ぺこっと頭を下げてオフィスを出て行く。
「私もそろそろ帰るね。彼と待ち合わせてるから。じゃ、お先~」
同期の友人が片手をあげて足取りも軽く出ていった。
残されたのは私ひとり。
このドラフト、明日の朝一で提出しなきゃいけないから、今やらないと……。
私はため息をついた。ひとりきりなんて寂しい。
彼も残ってないかな……。
私は立ち上がって、隣のフロアに行った。がらんとした広い部屋を見回し、そっと部屋の隅へと進む。その場所に、彼はいた。
「あ、やっぱりまだいた」
よかった、とホッとする。
「なんだ、璃子か。また残業してるのか?」
彼が無愛想な表情で私を見た。いつもこんな調子。でも、私が残業しているとき、あなたもたいてい残ってる。
「あなたもでしょ」
「まあな。今日もふたりきりだな」
「そうね」
「ふたりきりになるの、待ちきれなかった?」
いたずらっぽく問うあなた。
「どう思う?」
私も妖艶に微笑みながら答えてみたりなんかして。
でも、こんな駆け引きをしようとしても、あなたにはお見通しみたい。
「俺に会いたくてたまらなかったって顔してる」
「ええ、ずっとずっと会いたかった。あなたが欲しかった」
「まだ仕事中だろ?」
「いいの」
「いつ誰が来るかもわからないのに?」
「覚悟の上よ」
私はそっと手を伸ばして、彼の上着に手をかけた。薄手のそれを肩からそっと脱がせる。
「こんなところで、いやらしい女だな」
「あなたが魅力的だからいけないの。私はあなたを見ただけでそそられちゃうんだから。自分の罪深さを自覚してる?」
「俺のこと、そんなふうに熱い目で見つめるのは璃子だけだよ」
「ほんと? 信じていい? こんなふうにしてるの、私だけよね?」
「ああ、信じていい。おまえを満足させられるのは俺だけだ」
その言葉に胸が熱くなる。
普段の彼は、本当に目立たない。オフィスの片隅で静かに佇んでいる。そのくせ、内には信じられないほどの情熱を秘めているのだ。いったん熱くなると火傷しそうに危険。そしてその熱はなかなか冷めない。そんなあなたを狙っている人は多いけど、あなたは今夜、私のものになる。
「ね、いい……?」
私の問いかけに、彼は無言で唇を開く。
薄く開いた唇が、私を誘う。
「まだだ。ちゃんと時間をかけて……」
彼のささやき声に私はうなずく。
焦っちゃダメ。彼との時間、ふたりきりで過ごすこのひとときを大切にしなくちゃ。
でも、いざ準備が整うと、もう抑えが効かない。
私は彼の唇に自分の唇を押しつけた。
「焦るな」
「だって! どれだけあなたを味わいたかったか!」
貪るような私のキスに、あなたはそれ以上の情熱で答えてくれる。
濃厚で……熱く……舌に絡みつく。
もう、我慢できない。私の中をあなたでいっぱいにして!
惜しげもなく喉に注がれるそれを、最後のひとしずくまで飲み干す。
「ああ……」
彼の熱が体中を駆け巡る。満たされて熱い吐息をこぼしたとき。
オフィスのドアがガチャッと開く音がした。
三年年下の後輩社員が、ぺこっと頭を下げてオフィスを出て行く。
「私もそろそろ帰るね。彼と待ち合わせてるから。じゃ、お先~」
同期の友人が片手をあげて足取りも軽く出ていった。
残されたのは私ひとり。
このドラフト、明日の朝一で提出しなきゃいけないから、今やらないと……。
私はため息をついた。ひとりきりなんて寂しい。
彼も残ってないかな……。
私は立ち上がって、隣のフロアに行った。がらんとした広い部屋を見回し、そっと部屋の隅へと進む。その場所に、彼はいた。
「あ、やっぱりまだいた」
よかった、とホッとする。
「なんだ、璃子か。また残業してるのか?」
彼が無愛想な表情で私を見た。いつもこんな調子。でも、私が残業しているとき、あなたもたいてい残ってる。
「あなたもでしょ」
「まあな。今日もふたりきりだな」
「そうね」
「ふたりきりになるの、待ちきれなかった?」
いたずらっぽく問うあなた。
「どう思う?」
私も妖艶に微笑みながら答えてみたりなんかして。
でも、こんな駆け引きをしようとしても、あなたにはお見通しみたい。
「俺に会いたくてたまらなかったって顔してる」
「ええ、ずっとずっと会いたかった。あなたが欲しかった」
「まだ仕事中だろ?」
「いいの」
「いつ誰が来るかもわからないのに?」
「覚悟の上よ」
私はそっと手を伸ばして、彼の上着に手をかけた。薄手のそれを肩からそっと脱がせる。
「こんなところで、いやらしい女だな」
「あなたが魅力的だからいけないの。私はあなたを見ただけでそそられちゃうんだから。自分の罪深さを自覚してる?」
「俺のこと、そんなふうに熱い目で見つめるのは璃子だけだよ」
「ほんと? 信じていい? こんなふうにしてるの、私だけよね?」
「ああ、信じていい。おまえを満足させられるのは俺だけだ」
その言葉に胸が熱くなる。
普段の彼は、本当に目立たない。オフィスの片隅で静かに佇んでいる。そのくせ、内には信じられないほどの情熱を秘めているのだ。いったん熱くなると火傷しそうに危険。そしてその熱はなかなか冷めない。そんなあなたを狙っている人は多いけど、あなたは今夜、私のものになる。
「ね、いい……?」
私の問いかけに、彼は無言で唇を開く。
薄く開いた唇が、私を誘う。
「まだだ。ちゃんと時間をかけて……」
彼のささやき声に私はうなずく。
焦っちゃダメ。彼との時間、ふたりきりで過ごすこのひとときを大切にしなくちゃ。
でも、いざ準備が整うと、もう抑えが効かない。
私は彼の唇に自分の唇を押しつけた。
「焦るな」
「だって! どれだけあなたを味わいたかったか!」
貪るような私のキスに、あなたはそれ以上の情熱で答えてくれる。
濃厚で……熱く……舌に絡みつく。
もう、我慢できない。私の中をあなたでいっぱいにして!
惜しげもなく喉に注がれるそれを、最後のひとしずくまで飲み干す。
「ああ……」
彼の熱が体中を駆け巡る。満たされて熱い吐息をこぼしたとき。
オフィスのドアがガチャッと開く音がした。
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