寂しがり屋のプリンス
寂しがり屋のプリンス
彼は、通称『プリンス』。
気難しくて、扱いづらい。
皆が彼のことを必要としているけど、すぐにへそを曲げてしまう。
従業員7名の小さな事務所で、王子様のように君臨している。
「茉莉、プリンスが呼んでる」
「またぁ?」
「頼むよ、なんとかして」
同僚の懇願に、イヤイヤ席を立つ。
そりゃさ。私だってプリンスのことは好きだよ?
でもこう度々呼ばれるんじゃ大変っていうか。
プリンスには専用スペースが用意されている。
寄りかかれる壁があって、給湯室にも近いいい場所だ。
いつも特別扱いにしてるから、あんなに気位が高くなっちゃったんじゃないですかね。
プリンスの定位置に向かうと、彼は悠然と私を招き入れる。
「よう、やっときたな茉莉」
余裕の笑みで迎えられると、なんだかイライラしちゃう。
「また何をへそ曲げてるのよ」
「お前が来ないからだろ?」
「アンタにばっかり構っているほどヒマじゃないのよ」
冷たく言うと、プリンスはムッとしてソッポを向く。
そのまま私たちは平行線。でもにらみ合いを続けてもプリンスには全く効果がない。
通りすがりの同僚が「あ、プリンス君これお願い」と声をかけても、「今はダメ」の一点張り。
同僚は、「やっぱ茉莉じゃないとダメか」と私の肩を叩いて行ってしまう。
皆に迷惑かけるの辞めようよ。
私は呆れて、彼の肩を叩く。
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