寂しがり屋のプリンス


「よしよし、これで治るよ」


お腹をマッサージしてあげると、ご機嫌が良くなってきたみたい。
うーっと唸って体を軽く動かし始めた。


「ちゃんと働かないと首になっちゃうよ、プリンス」

「それは困る」

「だったら頑張って。本気出せば凄いんでしょ」

「分かった。見てろよ」


それから、プリンスはすごい勢いで仕事をし始めた。

プレゼン資料も、大判のグラフもスイスイ仕上げていく。
同僚は皆大喜びだ。


「さすが茉莉」

「いやいや。仕事してるのはプリンスですから」

「でも茉莉あってのプリンスだからね」


そう言われるのは悪い気分じゃないけどね。

その後のプリンスは大変良く働いてくれたので、私は帰り際、彼に会いに行く。


「頑張りました。格好良かった。プリンス」

「……もう帰るのか」

「そうね。明日またね」

「つまんねぇな。またいじけちまうぞ」


寂しがり屋で困った人。


「仕方ないな。ちょっと待ってて」


私はデスクに戻り、メモ帳を開いて手早く打ち込み、印刷ボタンを押す。


「明日も頑張って」

「茉莉」


プリンスの体中をめぐって出てくるのは、一枚のA4用紙。
真ん中に書かれた“ご苦労様“と”Kiss”の文字は、私からのラブレター。

お局事務員の私と、レーザープリンターのプリンス。
明日も仲良く頑張りましょ?


【Fin.】





※プリンス→プリンター
 腹痛→紙詰まり
 昼食→紙補給
 吐瀉物→インク
 って感じです。
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