・君が望むなら
私は困った顔の上司に笑顔を向ける。


「はい。ゼロを付け足すんですよね? 承知しました。会議の時間までに終わらせます」

「宜しく」


上司は私の肩をポンと叩き、煙草を吸いに休憩室へと消えてゆく。


___なによ! 自分は優雅に休憩かい!


大きくため息をつき、私は大量の修正資料と共に窓際のデスクへ戻る。

さてさて。
これからどうしますか。

パラッと修正資料をめくる私に、彼が優しく声をかけた。


「なに? また失敗しちゃった?」

「違う違う。今回は私のミスじゃないよ。あそこに居る新人君」

「そうなんだ? でも、君が手直しするんだろ?」

「……うん。頼まれた事だし。これも仕事のうちだし、ね」

「そっか。頑張れよ。俺も手伝うからさ」


やめてよ。
優しくされると甘えたくなっちゃうじゃない。
ここは職場だというのに。


「ありがと。いつも私を助けてくれて」

「いや。俺にはこれ位の事しか出来ないし」


___そんなに優しくしないでよ。


「さ、早く片付けちゃおうぜ」

「……私、入社した時から雑用ばっか。いい加減、嫌になっちゃうよ」


ポツリと呟いた私に、彼は呆れた顔をして言った。

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