幼ぶるヒツジ


俺の部屋はいつから出入り自由になった?


しかも入り浸っている奴の九割が野郎だというのは試練なのか。


「ああああ女子が足りない!女子と喋りたい!」


「他人の家で変なこと叫ぶな」


「だって俺の気持ちが分かるのは、今となっては柊弥(しゅうや)しかいないじゃねえか!畜生!みんなしてひと夏のアバンチュールを楽しみやがって!」


「………」


情けない男泣きは見たくもない。


ゲームの画面が切り替わる所で外を見たら、辺りがすっかり暗くなっていた。


もう夜の七時だ。


亮が来たのが五時頃だから、かれこれ二時間も同じ話を聞かされていることになる。


なんでこんな日に限ってバイトがなかったんだ。


無給で哀れな男の叫びを聞き続けるなんて、拷問でしかない。


「亮は夏休み中合コン行きまくってたんだから、知り合いくらいできたんじゃねーの?」


「馬鹿か!手に入る女子の連絡先は、ほとんど先輩優先なんだよ!んな簡単に優良物件が回ってくるわけねーだろうが!」


怒られているが全く腹が立たないのは、負け犬根性全開の亮のせいだろうか。


「つるんでた奴らがほとんど彼女作って楽しんでんのに、柊弥はなんでそんなに余裕なんだよ。バイトばっかして楽しいか?」


「下宿生はバイト優先になるからしゃーなしだ。こっちは死活問題だっつの」


仕送りは家賃と水道光熱費だけでほぼ消える。


本気出して働かないと食べてもいけなくなる。


ボンボンの亮にはいくら説明しても伝わりにくいところだ。


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