幼ぶるヒツジ
*
俺の部屋はいつから出入り自由になった?
しかも入り浸っている奴の九割が野郎だというのは試練なのか。
「ああああ女子が足りない!女子と喋りたい!」
「他人の家で変なこと叫ぶな」
「だって俺の気持ちが分かるのは、今となっては柊弥(しゅうや)しかいないじゃねえか!畜生!みんなしてひと夏のアバンチュールを楽しみやがって!」
「………」
情けない男泣きは見たくもない。
ゲームの画面が切り替わる所で外を見たら、辺りがすっかり暗くなっていた。
もう夜の七時だ。
亮が来たのが五時頃だから、かれこれ二時間も同じ話を聞かされていることになる。
なんでこんな日に限ってバイトがなかったんだ。
無給で哀れな男の叫びを聞き続けるなんて、拷問でしかない。
「亮は夏休み中合コン行きまくってたんだから、知り合いくらいできたんじゃねーの?」
「馬鹿か!手に入る女子の連絡先は、ほとんど先輩優先なんだよ!んな簡単に優良物件が回ってくるわけねーだろうが!」
怒られているが全く腹が立たないのは、負け犬根性全開の亮のせいだろうか。
「つるんでた奴らがほとんど彼女作って楽しんでんのに、柊弥はなんでそんなに余裕なんだよ。バイトばっかして楽しいか?」
「下宿生はバイト優先になるからしゃーなしだ。こっちは死活問題だっつの」
仕送りは家賃と水道光熱費だけでほぼ消える。
本気出して働かないと食べてもいけなくなる。
ボンボンの亮にはいくら説明しても伝わりにくいところだ。
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