幼ぶるヒツジ
「俺さあ柊弥、クリスマスまでにまじで彼女作らねーとやばいんだって」
「またベタな期限だな。一応聞いてやろう、なんでだ?」
「十代のクリスマスは家族か野郎と過ごしましたって黒歴史作っちまうじゃん!うおおお」
ただの笑い話に過ぎないそれのどこが問題なのか、俺にはさっぱり分からない。
「彼女作っても時間と金使うだけでいいことないって。できるときにはできるもんだろ。いーじゃん、気にしなくて」
「柊弥はその気になればできるから、そんな発言が出てくるんだよ」
「……お前もその気になってダイエットしたらできるだろうよ」
亮は腹なり顎肉なりが出ている。
こいつを見ていたら、乱れた食生活と運動不足が合体した恐ろしさを目の当たりにした気分になる。
腹減ったなあ……と思って、再び時計を見る。
「ちょっと待ってろ。なんか食いモン買ってくる」
「柊弥様!」
このテンションは、今夜一晩愚痴聞かされるパターンだろうと思って、俺は腹を括った。
上着を手に持った時、室内にチャイムが響いた。
「またあぶれた野郎の客か……」
こうなったら一人面倒見るのも、二人見るのも同じだ。
「アポなし迷惑なんすけど、次は誰?」
完全に同級生の男が来ると踏んでいた俺は、チェーンもつけずに勢いよくドアを開けた。
「こんばんは。次は私でーす」
聞きなれた高い声に、眠気と空腹は吹っ飛んだ。