幼ぶるヒツジ
「バイバイ」


「あはぁ~バイバーイ。あゆなちゃん、今度一緒に遊園地行こうねぇ」


「考えとくー」


俺に背中を押されて出ていく亮を、アイドル顔負けの笑顔で見送るあゆな。


亮は完全に腑抜けになっている。


おかげで抵抗する力もふにゃふにゃだから苦はなかったが。


ドアを閉め、鍵をかけ。


しばらく外で阿呆が何か話していたみたいだったけど、そこらへんは完全無視を決め込んだ。





「……さて、次はお前だあゆな」


「やだあ、柊ちゃん。なんかヤラシイ」


凄んでる男にやらしいって何だ。


あゆなは二人になっても何も警戒していない、むしろ挑発するような態度を見せる。


こいつが本当の妹でなくてよかった。


もし兄妹だったなら、俺は毎日学校まで送迎に勤しんだことだろう。


「ここに来る時は連絡しろって言ってあるだろう。どうすんだ、変な奴に目をつけられたら」


「柊ちゃんのお友達って変態なの?」


「……そういう奴もいるかもしれない」


亮のせいで否定ができなくなった自分が情けない。


「いきなり来られても俺だってバイトで遅くなるかもしれないって言わなかったか。仕事中で連絡もつかなかったら、危ないって分かるだろう。いつだってお前に気付いてやれるわけじゃない……て、おい!話を聞け!」


慣れた様子で部屋に上り込むと、ゲーム画面を無視してテレビをつけ始める。


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