オレンジジュースとアイスコーヒー
「──何で?」
「だって、あたし佐久真のこと好きじゃなかったから。佐久真のいいところ、今まで全然気づいてなかった。受付の子みたいに緊張しないで話せる相手じゃないし、ライブに誘ってたあの子みたいにバンドは詳しくないし……っ」
何であたしが、泣きそうになってんだろ。答えはもうわかる。
今更何をって感じだけど、好きなんだ。佐久真のこと。
だからこんなに悩んで、訳がわからなくなっちゃうんだと思う。
「僕のこと好きじゃないのは、告白にOKしてもらったときからわかってたよ。あと、ライブ誘った子はただ単に彼女誘えなかったらせめて女の子誘ってくれって先輩に頼まれたからで。何か思うことがあって誘ったわけじゃなくて。
受付の子とは、緊張しなくて、空井さんと話すのは緊張するって……何でかわからなかった?」
眉を下げて、少し寂しそうに笑う佐久真。全然わかんなかった。コクンとうなずく。
その拍子に、涙がぽたりと膝に落ちた。
「そんなの、空井さんが好きだからだよ」
「え?」
「好きな子と話すの、緊張するから。やっとちょっと慣れてきたんだけどね」
あたしが気が強そうだからとか、話しづらいからとかじゃなくて。好きだから?