オレンジジュースとアイスコーヒー
「う、ううー……何それっ……」
「えっ、ちょっ、空井さん!?」
泣けてきちゃうじゃん。そんなに好かれていたことすら、あたしは知らなかったよ。
何も気にすることなく泣いていると、佐久真が戸惑ったように開いていないおしぼりを差し出す。そこは、ハンカチでしょうが。持ってなかったのか。
鼻をすすりながら、おしぼりを開けて目にあてる。あたしほんとはハンカチあるんだけど。佐久真がくれたものだから。
「あたしなんか、全然っ、ダメなのに」
「嬉しかったよ。付き合ってもらえて、ライブにも来てくれて。好きになってもらえなかったのは、残念だけど。だから、ありがとう」
「ま、待って」
それだけは、訂正しておかないといけない。顔をあげて佐久真の顔を見ると、また視界が潤んできた。
「あたしっ、佐久真のことが好き。好きなの……っ」
別れようと言ったのは、あたしなのに。ちゃんと好きだって、知っててもらいたいなんて。だから、怒ってくれていい。自分勝手なあたしに。