オレンジジュースとアイスコーヒー
「えっ?」
今度は完全に、佐久真が驚いた表情を見せた。それから、火がついように顔が赤くなっていく。
だけどしばらく待っても、佐久真の表情が、怒りに変わることはなかった。顔の赤さは、照れから来ているものらしい。
「今更ごめんね」
「や、今更っていうか、えっ? そしたら、別れる必要ってあるのかな。というか、何で空井さん別れ話……」
「彼女でいる資格ないなって思ったし、都合良すぎるかなって」
再びおしぼりに目をあてると、ため息が聞こえてきた。さすがに佐久真も呆れたかな。
「それなら、まずはそっちから先に話して欲しかった。順番間違ってないかな? 先にそれ言われたら、絶対にそんなことないって言えるんだからさ」
「だって、この前ライブに行ってなかったら……あたしきっとまだ佐久真に失礼なままだったんだよ?」
「でも実際はライブに来てくれて、僕のこと好きになってくれたわけだし。正直なとこ、今すごい嬉しい。だから、空井さんが別れなくてもいいなら、僕は別れたくない」
はっきりした、クリアな声。佐久真の声は、耳に心地良いものだ。
優しいこの声が、あたしは好きだ。