オレンジジュースとアイスコーヒー


3組出るうちの、最初が『Midwinter』。ガタガタと始まる準備に、観客のざわつきが強くなる。

人が多くて、前に出るのは難しそうだったので、一番後ろで見ることにした。ちょっと離れてるけど、こっちのほうが冬和の顔が見える。


「最初の人ら知らないんだけど、この前やっちゃんが話しててさー。一緒にライブできたらいいなって言ってたの、できて良かったよね」

「まじかー。うまいのかな」

「やっちゃんが歌声が澄んだボーカルと優しい演奏が合ってる、いいバンドなんですって言ってたから、うまいんじゃん?」


コホンと咳払いをして、笑ってしまいそうな口元を押さえた。前にいる子たちは、あたしを気にした様子もなく、会話を続けていく。

その“やっちゃん”という人がどういう経緯でその話をしたか気になるところではあるけど、とても話しかけられない。でも、それよりもボーカルに対するコメントが嬉しかった。


バンドマンがあたしと同じ考えなんだもん。やっぱり、君の声はすごいんだ。


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