オレンジジュースとアイスコーヒー
「──あ、」
こっち気づいたかな?
うつむき気味だった冬和が、顔を上げた。長かった前髪は、短く斜めに流している。
短いほうが似合うと言ったのはあたしだけど、伸ばしてほしいかも。あんまり他の人が、冬和がかっこいいことに気づいたら困る。
人目を気にしつつも、冬和に見えるくらいの位置まで右手を持っていく。
あ、笑った。今笑ったよね。
ふっと笑みをこぼした冬和は、あたしを見てだった。すぐまたうつむいてしまったけれど。きっとそうだ。
そうだって、思いたい。
よく友達が好きなアイドルがこっちを見てくれたって言ってたのに、ないないって思ってたけど。今ならその気持ちがちょっとわかるかも。
たとえ見てなくても、そうだって思っちゃうよね。だってこれだけ離れてるんだから、もしかするとあたしの周りも同じことを考えてるかもしれない。
でも、あたしにだって思ったら、すごく嬉しいことだ。勘違いでも、いいやって思える。
──リベンジライブは、最高だった。