オレンジジュースとアイスコーヒー
「はい。冷たいのだけど、良かった?」
「うん。ありがとう」
冬和は渡されたアイスコーヒーを見て、嬉しそうに笑った。その笑顔を見て満足したあたしは、再び隣に腰を下ろす。
隣にいられることを、とても嬉しいと思う。そんなの、絶対言わないけど。
「それのどこがおいしいんだか」
「月歌はそればっかりだね。オレンジジュースって、甘くない?」
「そんな苦いのより甘いほうがいいよ」
ペットボトルのふたを開けて、一口飲む。濃いやつは、たくさん飲むとちょっと喉がいがいがするのはわかるけど。
アイスコーヒーより絶対マシ。
「そうかなあ」
冬和はプルタブを開けて、砂糖の入っていないコーヒーを普通の飲み物みたいに飲んでいく。苦味がおいしいとか言うけど、全然理解できない。
「苦そう」
「あはは、うん」
眉をひそめるあたしを笑ったかと思うと、冬和の顔がとても近くにあった。目を閉じる隙もなかった。
ふわりと香るコーヒーの匂い。でも、オレンジジュースと混ざって何か変な感じ。不味そう。というか、不味い。
人のいないホームで良かった。冬和もそれをわかっててのことだろう。