オレンジジュースとアイスコーヒー


「はい。冷たいのだけど、良かった?」

「うん。ありがとう」


冬和は渡されたアイスコーヒーを見て、嬉しそうに笑った。その笑顔を見て満足したあたしは、再び隣に腰を下ろす。

隣にいられることを、とても嬉しいと思う。そんなの、絶対言わないけど。


「それのどこがおいしいんだか」

「月歌はそればっかりだね。オレンジジュースって、甘くない?」

「そんな苦いのより甘いほうがいいよ」


ペットボトルのふたを開けて、一口飲む。濃いやつは、たくさん飲むとちょっと喉がいがいがするのはわかるけど。

アイスコーヒーより絶対マシ。


「そうかなあ」


冬和はプルタブを開けて、砂糖の入っていないコーヒーを普通の飲み物みたいに飲んでいく。苦味がおいしいとか言うけど、全然理解できない。


「苦そう」

「あはは、うん」


眉をひそめるあたしを笑ったかと思うと、冬和の顔がとても近くにあった。目を閉じる隙もなかった。


ふわりと香るコーヒーの匂い。でも、オレンジジュースと混ざって何か変な感じ。不味そう。というか、不味い。

人のいないホームで良かった。冬和もそれをわかっててのことだろう。


< 25 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop