オレンジジュースとアイスコーヒー
「じゃあ、オレンジジュース」
「待ってて。すぐもらってくる」
「あ、ありがと」
胸がギュッとつかまれたみたいに苦しくなる。込み上げてくるのは、申し訳なさ。
失格、だよなあ。
適当に選んできた自分の洋服を見て、ため息をつく。スカートくらい、履いてくれば良かったのかもしれない。
……あの子を呼んだほうが、良かったのかも。
あたしはバンドあまり詳しくないけど、あの子がバンド好きなのはあたしも知っている。フェスに行ったときのことを、熱く語っていたのを聞いたことがある。
「はい、どうぞ。興味ないことに付き合わせてごめん。でも来てくれて嬉しかった」
「……そりゃ、あんだけしつこいんだもん。来ないわけにいかないじゃん」
ああ、違うのに。あたしはそんなことを言いたいんじゃない。佐久真からオレンジジュースを受け取りつつ、視線をそらす。
「そうだよね。ごめん」
「……違う、ごめん」
素直に謝ると、佐久真が驚いたように目を見開く。それから、小さく笑った。
こうして見ると、綺麗な顔してるなあと思う。前髪邪魔だけど。