オレンジジュースとアイスコーヒー
そのおかしさにも気づかなかった自分が可笑しくて、笑ってしまった。
「全然怒ってないです。ただ、ごめんなさい。あたしあんまり興味がなかったから、素人目線の感想しか言えないと思う」
「あはは、興味ないのは冬和が言ってた。もう次のが始まるし、感想は冬和に伝えておくかしてくれればいいよ。その素人目線が知りたいから、厳しくよろしくー」
ぺこりと頭を下げたかと思うと、ステージの方へと行ってしまった。ステージでは、次のバンドたちが楽器を鳴らしながら調整しているみたいだ。
申し訳ないけど、次のバンドを見るつもりはない。そろそろ帰り時だろう。
……にしても、佐久真、遅いな。ゴミ箱、受付にあるとかじゃなかったのかな。
すぐには戻って来なかったので、受付へと行ってみることにした。受付は出入口から見える場所にある。少し歩いて覗いてみれば、佐久真の背中があった。
「まじかー。あれ、お金なくて新譜買えなくて」
「ふふっ、いいよー。貸してあげる。しかも聞いてよ。発売日に狙って行ったから店舗巡りに遭遇したんだよ!」
それ以降の会話は、演奏が始まってしまって聞こえなかった。その音に反応してか、佐久真がこちらを振り向く。
ちょうどいいや。帰ろ。