初心者オコトワリ!
就職してから、早いもので8年。
はじめはもちろん、私も彼と一緒に仕事をするのに、手を焼いていた。
しかし、相当な数の失敗を繰り返した後、気が付けば、いつしか彼との仕事も苦痛ではなくなっていて。
今や、私は彼の“専属”状態だ。

本当は、きちんと後輩に仕事を引き継がなければならない。
でも、何となくそれができない理由があるのだ。
仕事を進めながら、彼が痛いところを突いてくる。


「そろそろ、この仕事も新人にやらせろよ。お前も仕事忙しいし、大変だろう?」
「そうね。そうしたいのは山々だけど。」
「もしかして、候補はあの未来って女か?確かに、引き継ぐなら、若い方がいいな。」
「彼女、若い上にかわいいものね。きっと仕事も捗るでしょうよ。」
「オイオイ、拗ねるなよ。単に、若い方がすぐに居なくなる心配がないと思っただけだろうが。」

彼は本当は私のことを心配して言ってくれているのだろうことは、分かっている。
しかし、お局アラサーOLは、彼の弁解を素直に受け取る事はできなかった。
いじけて、勢いのまま私は宣言する。

「もういい、本当にこの仕事は未来ちゃんに引き継ぐ。」
「だから、拗ねるなよ。」
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