こい-みず 【恋水】(ぎじプリ)



「……抱きしめても、いいですか?」


貴方を忘れないように。
しっかり、この体に刻んでおきたい。


「紫さん…っ。 いけません、私さっきまで書庫に駆り出されてましたから埃だらけで…っ」

「いいんです、そんなの。」


そのジャケットに染み付いたにおいごと、焼き付けておくの。

ほら。
息を吸い込んだら、あっという間に深遠の海。どこまでもどこまでも、私を連れてってくれる。


「広岡さんのにおい、安心します。」

「…困った方だ。おじさんをからかうと、痛い目を見ますよ。」

「見せて、くれます?」

「参りましたね…」


もどかしい。
2人を隔てる一切が、無くなればいいのに。






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