仮氏
当てもなく走っていたので、適当に見えた公園のようなところに車を停めた。
自販機が見えたので、

「私、何か飲み物買ってくるよ」

と車を降りようとした。

「ん、俺も行く」

そう言って2人で並んで歩いた。

「あ!俺小銭ないかも!!」

「ジュースくらい私がおごるよ」

「さすが先輩!」

2人で笑った。
彼が、私の右手を握った。
びっくりして彼を見る。

「あ、こっちか」

彼は指を絡めてきた。
それを彼が着ていた上着のポケットに入れた。

「ちょっと待った!タバコ吸ってもいい?」

「うん」

「莉音は吸わないよね?」

「うん」

「だよね、ごめんね」

そう言って彼は灰皿に向かった。
繋がれていた手が離れた。
私は、彼がタバコを吸うのをぼーっと見ていた。
彼は、もう一度私の手を握って、指を絡める。

「別に、こんな時までこんなことしなくていいのに」

「いいじゃん、何かガキみたいで」

彼はそう答えた。
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