仮氏
「お先に失礼しまぁす」

メイク直しもバッチリな彼女たちはそう言って社内からあっという間に消えていった。

(合コンにでもいくのかな…)

キャピキャピしてようが、チャラチャラしてようが、若いってすごい。
それだけでも羨ましくすら感じる。
カタカタとキーボードを叩く音が部屋に響いた。
私は書類を無事先生のパソコンに移して、給湯室を確認して、会社をあとにした。

事務所を出ると、サラリーマンや学生で人が溢れていた。
街もキラキラざわざわしてて。
そんな中自分が取り残されてるような、そんな虚しさを感じる。
別に仕事に不満もない。…この心が空っぽな感じはなんなんだろう。

コーヒーショップで買ったミルクティーを片手に、駅前のデッキで歌うストリートミュージシャンを眺めながら私はそう感じていた。


「あれ?お姉さん1人?」


突然声をかけられる。
こういうことはよくあるのでいつも通り、私は声をかけてきた男を無視してその場を去ろうとした。

「あれ?シカト〜?」

なかなかしつこい。私は少し歩く速度を上げた。

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