“I’m in your corner.”
君と僕は“同期”ということになるのかな? 

入社したときから僕らはずっと一緒だから。

経理課で領収書まみれになって発狂しそうになってた君も、福祉課でみんなの福利厚生のために奮闘した君のことも知ってるよ。

君は一生懸命な頑張り屋さん。

僕は傍らで見守りながら、いつだって君のことを誇らしく思っているんだよ。

でもね……心配でもある。

頑張り屋なのはいいけれど、やる気がからまわりして思わぬ大失敗をすることも……あるよね? 

自分の不甲斐なさに、給湯室でひっそりと涙していたのを知ってるよ。

あのときは、熱い紅茶に砂糖を何杯も入れていたね……。

優しいのは君の長所だけれど、ちょっとお人よしなところがあるよね。

それで貧乏くじを引かされたりしているでしょ? 

ほらまた、今日だって――。

「あらやだっ、ひょっとしてもう帰るとこだった? ごめんなさいね~、急で悪いんだけど、残業頼めるからしらぁ?」

あの先輩、まえにも同じようなことあったよね。

君が断らないってわかってるんだぜ? 誰よりもきちんと片付けてくれるってこともさ。

なのに、君ときたら――。

「わかりました。では、伝票と合わせて一式おあずかりしますね」

「助かるわぁ~。じゃ、私はもう出ちゃうけどあとよろしく」

「はい。お疲れ様でした」

あーあ、君ってひとはもう……。

帰るつもりで給湯室の片付けまで済ませたんじゃなかったの? 

さてさて、今日は金曜日だ。

気づけばもう残っているのは君ひとりだね。

まあ、僕がいるにはいるけれど……。

まだかかりそうなら、一息いれたら?

「お茶でも飲もうかな……」

そうそう。この際だから、来客用の高いお茶でも淹れちゃえ淹れちゃえ。
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