ありがとうとさよならと
ありがとうとさよならと
「なあ、俺達って出会ってどのくらい経った?」
仕事が終わり、ほっとしている所に彼がふと、そう聞いてきた。
「そうね、私が新入社員で入ってきた時からだから・・・かれこれ7年経つかしら?」
彼はそんなに経つのか、と感慨深げにため息をひとつ漏らす。
そんな彼を軽く笑みながら見つめた。
「懐かしいな・・・。お前、入社したての頃、よく俺の目の前で泣いていた。仕事で失敗した、人間関係で上手く行かないって。俺がよく慰めていたのを覚えてるよ」
「人前では泣けないから・・・。でも、あなたの前では不思議と泣けたの。あなたにだけよ、こんなに私の泣いている姿を見せたのは」
しゅるり、と首元に付けていたスカーフを取る。
そして丁寧に畳むと、紙袋の中にいれた。
「こんな風に会うのも、今日で終わりなんだな」
「・・・そうね。長いようで短かったような気がする」
「いい奴なのか?お前の結婚相手は」
「ええ。とっても優しい、私の事を第一に考えてくれる人。・・・でもあなたには負けるかも」
ためらいもなく制服のスカートを脱ぐ。
そして上着も、シャツも・・・。
「お前に触れたいところだけど、未練が残るから止めておく。・・・幸せにしてもらうんだぞ?もう俺の前で見せたような悲しい顔をするんじゃない」
そう言って、彼は私の服を渡してくれた。
「分かってる。私もあの人に幸せを返せるように頑張るわ」
彼は寂しそうな笑みを零す。
私は受け取った服を着て、そして彼に残された私の痕跡を全て紙袋に入れた。
「あなたが私の事を忘れる事が出来るように、私の痕跡は全てなくしていくわね。・・・きっと次、あなたの前に現れる人は、もっと若くて綺麗な人。その人の事を大事にしてあげて?」
「・・・当たり前だろう。俺はどんな女だろうと大切にするさ」
「あなたと出会えてよかったわ。これからも元気でね」
「ああ、お前もな」
手で軽く彼の胸元を押す。
そして扉の前で立ち止まり、もう一度彼を見つめた。
彼は優しく微笑んでいた。
私もその笑みに応えるように笑みを浮かべると、電気を消してその場から去った。
仕事が終わり、ほっとしている所に彼がふと、そう聞いてきた。
「そうね、私が新入社員で入ってきた時からだから・・・かれこれ7年経つかしら?」
彼はそんなに経つのか、と感慨深げにため息をひとつ漏らす。
そんな彼を軽く笑みながら見つめた。
「懐かしいな・・・。お前、入社したての頃、よく俺の目の前で泣いていた。仕事で失敗した、人間関係で上手く行かないって。俺がよく慰めていたのを覚えてるよ」
「人前では泣けないから・・・。でも、あなたの前では不思議と泣けたの。あなたにだけよ、こんなに私の泣いている姿を見せたのは」
しゅるり、と首元に付けていたスカーフを取る。
そして丁寧に畳むと、紙袋の中にいれた。
「こんな風に会うのも、今日で終わりなんだな」
「・・・そうね。長いようで短かったような気がする」
「いい奴なのか?お前の結婚相手は」
「ええ。とっても優しい、私の事を第一に考えてくれる人。・・・でもあなたには負けるかも」
ためらいもなく制服のスカートを脱ぐ。
そして上着も、シャツも・・・。
「お前に触れたいところだけど、未練が残るから止めておく。・・・幸せにしてもらうんだぞ?もう俺の前で見せたような悲しい顔をするんじゃない」
そう言って、彼は私の服を渡してくれた。
「分かってる。私もあの人に幸せを返せるように頑張るわ」
彼は寂しそうな笑みを零す。
私は受け取った服を着て、そして彼に残された私の痕跡を全て紙袋に入れた。
「あなたが私の事を忘れる事が出来るように、私の痕跡は全てなくしていくわね。・・・きっと次、あなたの前に現れる人は、もっと若くて綺麗な人。その人の事を大事にしてあげて?」
「・・・当たり前だろう。俺はどんな女だろうと大切にするさ」
「あなたと出会えてよかったわ。これからも元気でね」
「ああ、お前もな」
手で軽く彼の胸元を押す。
そして扉の前で立ち止まり、もう一度彼を見つめた。
彼は優しく微笑んでいた。
私もその笑みに応えるように笑みを浮かべると、電気を消してその場から去った。
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