見えない騎士たち【ぎじプリ】
00.

『なぁ、プリ男』

『おい! その呼び方はやめろと言っただろ、馬鹿デスク!』

 横並びに置かれた俺たち――経理課長のデスクとプリンターは、お世辞にも仲が良いとは言い難い。


 あまり仕事に前向きでない課長が座っていた時は、毎日ヒマで退屈を持て余していたものだ。

 それが先月、人事異動でやってきた新任の経理課長。
 コイツが、やたらと仕事熱心なのだ。

 おかげで、ほぼ電源が落ちっぱなしだったプリ男も、ちゃんと毎日稼動するようになった。

 するとこのプリ男――口うるさいこと、この上ない。

 しかも、寡黙な椅子ヤローからは相手にされないとあって、デスクの俺にばかり話しかけてくるのだ。

 まあ、コイツも電源落ちっぱで、ずっと寂しかったんだろう。
 反動で喋りまくりたい気持ちも、分からなくはない――

 ついそんな仏心を出し、相手をしてしまったが最後、プリ男は俺にしつこく絡んでくるようになった。

『おい、馬鹿デスク! 来たぞ』

『あ?』

 意識を背後に向ければ、経理課の部屋に入ってきたのは、入社2年目の女性事務員――里中莉子(りこ)だった。

『わ~! 莉子ちゃん、今日もかわいいなあ』

 俺には口汚いプリ男も、彼女――莉子が来たときには態度がコロッと変わる。

――まあ、変わったところで、それが莉子に分かるわけないんだが。

『ふん……初めて見るスカートだな』

『膝丈でフワフワでかわいいよ。なっ、デスクもそう思うだろ?』

『まあな。莉子なら何を着ても似合うが』

『もちろん、僕だってそう思ってるよ!』

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