見えない騎士たち【ぎじプリ】
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しばらくの間、互いにムッツリしていた俺とプリ男だが、莉子が傍に寄ってきた時だけは口を開いた。
『莉子ちゃん、見て見て! おかげさまで排紙もスムーズだよ』
『見ろよ、莉子。机がキレイだから、コイツの仕事もはかどってる』
俺の上に置かれたPCで、経理課長は滞りなく作業を進めていた。
「あの……課長。頼まれていた資料、お持ちしました」
莉子がほんの少し、緊張した面持ちで話しかける。
経理課長は手を止めて顔を上げ、彼女に優しく微笑みかけた。
「ありがとう、里中さん。いつも助かるよ」
一瞬で莉子は頬をピンク色に染め、肩をすくめた。
「いえっ、あの……私で良ければ、なんでもしますので……」
経理課長は、眼鏡を鼻先で軽く押し上げ、小さな声でからかうように言う。
「なんでもするなんて……君みたいな子に言われたら、ちょっとドキッとするな」
ピンク色だった莉子の頬は、あっという間に真っ赤になった。
幸いなことに、2人の会話を他に聞いていた奴はいない。
そう――俺たち以外は。