見えない騎士たち【ぎじプリ】
『ちょっ……今の聞いたか、馬鹿デスク』
『うるせえよ、プリ男……ちょっと待て……』
俺もプリ男も、ショックのあまり呆然としていた。
プリ男なんか、排紙スピードがさっきより明らかに落ちている。
――なんだよ、今のやり取り。
ウソだろ、莉子。
いつもかわいい格好して、毎朝、他より念入りに俺を磨いてくれるのは、まさかコイツのためだったのか――?
「里中さん。今、大丈夫?」
課長は立ち上がり、彼女に訊ねた。
莉子は「は、はいっ」と返事をして、小さくコクコクとうなずく。
「じゃあ、総務課に付き合って。あっちに頼んである資料も、まとめて取りに行きたいんだ」
俺たちはハッとして、叫んだ。
『行くなっ、莉子!』
『ダメだよ莉子ちゃん! そんなヤツについて行ったら……!』
俺たちはその時、莉子をコイツと行かせたくない、と強く思った。
だが、どんなに叫んでも、俺たちの声は莉子に届かない。
「分かりました。お供します」
莉子は嬉しそうに答え、いつもより少しだけ弾んだ足取りで、課長の後をついて行った。