見えない騎士たち【ぎじプリ】

『ちょっ……今の聞いたか、馬鹿デスク』

『うるせえよ、プリ男……ちょっと待て……』

 俺もプリ男も、ショックのあまり呆然としていた。

 プリ男なんか、排紙スピードがさっきより明らかに落ちている。

――なんだよ、今のやり取り。

 ウソだろ、莉子。

 いつもかわいい格好して、毎朝、他より念入りに俺を磨いてくれるのは、まさかコイツのためだったのか――?

「里中さん。今、大丈夫?」

 課長は立ち上がり、彼女に訊ねた。

 莉子は「は、はいっ」と返事をして、小さくコクコクとうなずく。

「じゃあ、総務課に付き合って。あっちに頼んである資料も、まとめて取りに行きたいんだ」

 俺たちはハッとして、叫んだ。

『行くなっ、莉子!』

『ダメだよ莉子ちゃん! そんなヤツについて行ったら……!』

 俺たちはその時、莉子をコイツと行かせたくない、と強く思った。

 だが、どんなに叫んでも、俺たちの声は莉子に届かない。

「分かりました。お供します」

 莉子は嬉しそうに答え、いつもより少しだけ弾んだ足取りで、課長の後をついて行った。
< 4 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop