見えない騎士たち【ぎじプリ】
『ああああ~……莉子ぢゃあぁぁん……』
プリ男は泣いている。
やっぱりコイツ、すげぇウザい!
でも気持ちは痛いほど分かる。――分かってしまう。
『泣くなプリ男……。まだ莉子がアイツのものになるって決まったわけじゃねぇだろ』
『で、でもぉぉぉ~~っ』
おいおい泣きながら、たまにズズッと音を立て排紙を詰まらせそうになるプリ男を横目に、俺は同じように泣きたい気持ちをグッとこらえた。
*
課長と莉子の距離がもどかしいほどゆっくり近づいていくのを、俺とプリ男は見守ることしか出来ない。
そうして迎えた、とある日の朝。
いつものように一番早く出勤してきた莉子は、俺を磨いてからプリ男の電源を入れた後、一旦自分のデスクに行き、また俺たちのほうに戻ってきた。
その手には、キレイにラッピングされた小さな箱。
リボンの下には、カードが挟まれている。
――そうか。今日は、バレンタインデーだ。
莉子は大きく息を吸い、俺の引き出しに手を伸ばす。
誰も見ていないのに、彼女は引き出しの中身を見ないようにして、小さな箱を中にしまった。
「はぁ~……緊張する」
小さく呟き、莉子は俺に両手をかけたまま、その場にしゃがみ込む。
「返事、くれるかな……」
莉子の切ない願いを、俺はその時、一番近くで感じとっていた。