見えない騎士たち【ぎじプリ】

   *


 年度末が近づき、経理課は繁忙期に突入した。

 莉子も、残業で遅くまで居残りしている。

 課長が皆に声をかけ、ポツポツと人が帰り始める。
 最後まで残ろうとしていた莉子も、課長に言われて、重い腰を上げた。

「課長、すみません……お先に、失礼します」

「ああ。遅いし暗いだろうから、充分気を付けてね」

 莉子は再び頭を下げると、ほんの少し肩を落として部屋を出て行った。

 今、この部屋にいるのは、経理課長一人だけ――

『今だ! デスク!』

『うおぉぉぉぉっ……!』

 俺は雄叫びを上げながら、精一杯の力で例の引き出しを押し出した。

――カコッ

 大きくも小さくもない微妙な音を立て、引き出しがわずかに前へ出る。

 それに気づいた課長は、引き出しを怪訝な表情で見つめた。

「いきなり開いた……なんだ、一体」

 引き出しを大きく引き、彼は目を見張る。

「……これは?」
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