見えない騎士たち【ぎじプリ】
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年度末が近づき、経理課は繁忙期に突入した。
莉子も、残業で遅くまで居残りしている。
課長が皆に声をかけ、ポツポツと人が帰り始める。
最後まで残ろうとしていた莉子も、課長に言われて、重い腰を上げた。
「課長、すみません……お先に、失礼します」
「ああ。遅いし暗いだろうから、充分気を付けてね」
莉子は再び頭を下げると、ほんの少し肩を落として部屋を出て行った。
今、この部屋にいるのは、経理課長一人だけ――
『今だ! デスク!』
『うおぉぉぉぉっ……!』
俺は雄叫びを上げながら、精一杯の力で例の引き出しを押し出した。
――カコッ
大きくも小さくもない微妙な音を立て、引き出しがわずかに前へ出る。
それに気づいた課長は、引き出しを怪訝な表情で見つめた。
「いきなり開いた……なんだ、一体」
引き出しを大きく引き、彼は目を見張る。
「……これは?」