史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「いや、別にブランド品だからオシャレだとは思ってないけど。
金のある男が好きっつーくらいだから、ブランド品も好きなのかと思って」

「憧れはありますよ〜。ただ、そこまでお金回んないんです」

「うちは結構給料いい方だろ。
なんか金かかる趣味でもあんの?
ジャニーズとか歌舞伎とか宝塚とか?」

ーーそうなんです、歌舞伎にはまっててって言えば良かったな。

なんで正直に話す気になったんだろう。

自分でも謎だ。



「奨学金、返してるんです。あと数年分、残ってるんで」


予想外の返答だったみたいで、霧島さんの目に珍しく動揺の色が見られた。


「貧乏なんですよ、うち」

「えっと・・これは聞いて構わない話か?」

ますます動揺していて、あの霧島さんが少しだけ可愛く見えた。

「ふふっ。 霧島さんでも遠慮とかするんですね。 珍しいもの見ちゃった。

うちの母親、典型的な若気の至りで18ででき婚して私を産んだんですよ。
で、案の定すぐ離婚。父親もろくに働いてないような男だったんで慰謝料も養育費も貰えなくて」

両親の離婚後、父親には一度も会っていないから生きてるのか死んでるのかも知らない。
会いたいと思ったこともなかった。

母親とは高校卒業まで一緒に暮らしていたけど、家を出てからは疎遠だ。

たまに電話がくるけど、お金を貸して欲しいとかそんな話ばかりだから最近はかけ直すこともしなくなっていた。
< 21 / 72 >

この作品をシェア

pagetop