史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「だから、金のある男が好きなんだ?」

霧島さんの問いかけに、私はにっこりと笑った。


「そうですよ。誰にどう思われようと、母親のようには絶対なりたくないんです。 万が一、離婚するにしたってお金のある相手ならちゃんと慰謝料とかくれるでしょうし、良いこと尽くめです」

力強く宣言した私に霧島さんは柔らかい微笑みを向けた。

不覚にも一瞬どきっとしてしまった。


・・・こんな優しい顔もできる人だったんだ。


「佐倉は綺麗だし、頭もいいし、間違いなく高収入のいい男が見つかるよ。

んで、セレブ妻になって優雅な主婦生活送れよ。 応援してやるからさ」


「えっ!?結婚しても会社は絶対辞めませんよ!
必死にバイトして、勉強して、お金借りてまで大学いって、やっと入った会社ですから。 定年まで働いて満額で退職金もらうつもりです。

それに、夫婦双方が働いた方がリスク管理の面からもーー」

「ぶはっ。 退職金満額って・・あー、腹痛い」

「そんな爆笑します??」

「いや、いいんじゃねーの。

パスタと肉じゃが作れる程度で家庭的アピールしてくる女よりずっといい嫁になると思うよ」

「・・パスタと肉じゃが、馬鹿にしないでくださいよ」

「だって俺、そこらの女より料理うまいし」




考えてみたら、家の事情とかお金のある男が好きとか、正直に人に打ち明けたのは初めてで・・・

誰かと本音で話すことがこんなに楽しいって事を初めて知った。


無表情で彫刻みたいだと思ってた霧島さんの人間らしい顔もたくさん見れて、少し得した気分だ。
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